今まで多くの研究者によってさまざまな分類の方法が試みられていますが、そのうちのいずれかが絶対的な方法として認められ、評価が確立されたというわけではありません。

一般によく知られているのは、キーホルツによる分類法です。それによると、うつ病を病因によって「内因性うつ病」「心因性うつ病」「身体因性うつ病」の3つに大別しています。

内因性うつ病は、特に原因がないのに、ひとりでに起こるうつ病のことです。「目覚まし時計が一定の時刻になると鳴るように」起こると表現する専門家もいます。

内因性うつ病には、うつ状態だけがあらわれる「単極性うつ病」と、うつ状態と躁状態が時期を違えて同じ人にあらわれる「双極性うつ病」(いわゆる躁うつ病)とがあります。

体質や遺伝など、体の内部的な要因が関係していると考えられていますが、今はまだ原因がはっきりとつきとめられていないことから「内因性」という言葉が使われています。

心因性うつ病はなんらかの心理的な葛藤や精神的ショックをきっかけとして、うつ状態になるものです。たとえば、長年連れ添った夫や妻を亡くすなど家庭内で不幸な出来事があったとき、あるいは仕事で失敗したり、過労に陥ったりしたときなどに起こります。このタイプのうつ病については誰でも容易に想像できるでしょう。

近年、日本で増加しているのも、ストレスに起因するこのタイプのうつ病であると考えられます。

心因性うつ病は、その症状の特徴が内因性うつ病によく似ているため、なかなか区別がつきにくいところがあります。内因性うつ病も何かの出来事を誘因として発病することもあるため、初めは心因性うつ病のようにみえて、あとから内因性うつ病だということがわかるというケースもあります。

身体因性うつ病は、身体的な病気や服用している薬物の影響で起こるものです。たとえば、糖尿病や慢性腎不全、潰瘍性大腸炎などの消化器疾患、パーキンソン病、てんかん、脳動脈硬化、脳腫瘍などによって、抑うつ気分などの精神症状があらわれることはよく知られています。また、降圧薬や副腎皮質ホルモン、慢性ウイルス性肝炎に用いられるインターフェロンなども同様の症状を誘発することがあきらかになっています。

ただし、最近では、この身体因性うつ病については、うつ病からは除外して考えるようになってきています。

ほかの2つのタイプと違い、主因はあくまでも身体的疾患や薬物の使用であり、それらを治療するかあるいは中止すれば、おのずと抑うつ気分などの精神症状も改善されます。

逆に、このような患者さんに対して、抗うつ薬の投与や精神療法など、うつ病の治療を行っても、回復の一助にはなりますが、身体的疾患や薬物の使用を放置したままでは完全によくなることはありません。

したがって、うつ病の一種として考えるよりも「身体的疾患や薬物によって引き起こされた“うつ状態”」であると考えたほうが適切なのです。

医師の立場からは、患者さんがうつ状態になっているのを確認したうえで、他の身体的な病気や薬剤によって引き起こされたのではない場合に、うつ病と診断を下すことになります。これらの点を明確にしたうえで診断を下さないと正しい治療は行えず、また脳の障害など重要な病気を見逃すことにもなりかねません。

ですから、抑うつ気分などの症状を訴える患者に対して、医師はうつ病と診断を下す前に、背景に身体的疾患がないか、服薬の有無などを十分に確かめる必要があります。